事務局からのお知らせ

副理事長のコラム

上田孝之コラム

2016.8

◇最近、せっかく医師が同意書を交付しても、支払基金の裁量権によって「療養費同意書交付料100点」が不支給になっている事態が目立ちます。
なぜ「同意書交付料」が減点されるのか、その理由などを解説してください◇  


 最近、医師が「同意書を書くのはもうやめます」と患者や我々施術者に宣言し、混乱を招いています。これは診療報酬支払基金(以下、支払基金)独自の裁量による交付料の不支給・減額査定が原因ですが、そもそも同意書交付料算定の本来の意義はなんだったのか。どのような経過で、「療養の給付」の分野に「保発20号」が設定されたのか。医師や鍼灸師らの如何なる動きがあったのか、解説します。
 平成8年当時の改定は、平成7年12月の中央社会保険医療協議会の意見を踏まえて、診療報酬の合理化に取り組むことが主眼でした。なかでも、患者の医療ニーズの高度化に対応するため、患者への情報提供を推進し、患者の選択を前提に特定療養費制度の活用を図ることに着目しました。療養費同意書交付料の算定を「指導管理等」の11番目の事項として「療養費同意書交付料の新設―はり、きゅう、あんま、マッサージに係る療養費の支給申請に必要な同意書等の円滑な交付を図るため、交付料100点を新設したこと」が盛り込まれました。
 通知発出に際し、業界団体からの要望であった「医師が同意書を交付しやすい環境をつくる」に応える形で、同意書を書いた医師には診療報酬1,000円が加算されれば、同意書交付が進むのではないかと期待しました。これは同意書交付に有益なものでした。しかし、近年、療養費に係る期間・回数制限も撤廃された結果、同意書発行の円滑化に危機感をもった医師会のうち、整形外科医を中心とした取り組みにより「鍼灸院に取られた患者を取り戻そう」と患者奪回運動が始まりました。その運動の一つがまさに支払基金や国民健康保険団体連合会(以下、国保連)の審査にあたる外科・整形外科委員による「療養費同意書交付料の減額査定」です。
 この動きは特に平成19年末頃から強化され、その後全国的に拡大していきました。支払基金審査会審査の結果による減額を受け、医師から鍼灸マッサージ施術の受療患者に対し、「同意書を発行しない」という事例が急激に増加しました。
 支払基金は、同意書交付料を認めない理由として、保険医療機関及び、保険医療養担当規則第17条に「保険医は患者の疾病又は負傷が自己の専門外にわたるものであるという理由によって、みだりに、施術業者の施術を受けさせることに同意を与えてはならない。」と記載されていると主張しています。しかし、この規則は保険医の診療方針を述べたものであり、“自己の専門外”を理由にみだりに同意してはならないということですが、支払基金の審査員は、「鍼灸治療を知らないことを理由に同意してはならない⇒鍼灸治療を理解していなければ、更に付け加えれば、鍼灸に詳しくなければ同意してはならない」と意図的に都合よく解釈し、特に内科医や小児科医の同意書交付料を減額査定しています。また、この療担規則17条を根拠に、「鍼灸同意を自粛するよう国が求めている」なんて、まったく見当外れなことを言っている医師会も存在します。療養費同意書交付料の減額査定の動きは益々増大する傾向です。業界団体側が交渉しても、「減額査定は私たちの権限である」と繰り返し、何ら解決に至っていません。
 鍼灸施術に対する同意書交付料について医科レセプトが減額されるポイントは、初診日と同意日が同日または近日であって、療養の給付が行われた時間的な幅が少ない場合に集中していることです。その原因は以下にあると考えられます。
 医科向けに出されている医科点数表の解釈の解説中に、療養費の支給対象となるものが「慢性病であって医師による適当な治療手段がないもの」と保発第32号通知を載せています。しかし、あえてこれを受けての運用上の課長通知である「6疾患について保険医より同意書の交付を受けて施術を受けた場合は、医師による適当な治療手段のないものとし療養費の支給対象として差し支えない」を、意図的に掲載していないのです。
 つまり厚労省は、保険医が通知に示された6疾患に同意すれば療養費の申請上は何ら問題ないと通知したのに、医科レセプトの同意書交付料を減額査定するのは支払基金や国保連の「審査委員の権限」だと豪語する始末です。
 療養費関係の諸通知では先行医療(鍼灸施術前に医師の療養の給付が行われたという実績を求めること)の概念は不要であり、これを定めた通知自体が平成16年に廃止されています。にもかかわらず医科レセプトの審査をするドクターは、相変わらず医療行為の実績に終始して、初診日と同意書交付までのタイムラグに固執しているのです。審査委員の判断によれば「初診日から一定期間の時間が経過していなければ同意書交付料算定を認めない」などと豪語する者もいます。
 同意書交付料減額査定は、あん摩マッサージ施術にも波及しています。変形徒手矯正術に関する医師の同意書は1カ月ごとの申請の度に同意書を添付しますが、これもまた減額の対象とされているのが実態です。減額理由は鍼灸の場合と異なり、「なぜこれだけ長期間の施術となるのか。これだけ長期間の施術期間であれば、すでに症状固定の段階にあり筋麻痺・片麻痺あるいは関節拘縮の緩解作用には効果が期待できないので同意書発行は如何なものか?」というものです。
 これら同意書交付料の減額査定は、査定された医師に対する非礼な行為・無礼な行為です。本来なら同意医師が怒り、反論し、減額査定分1,000円を取り戻すための「再審査」に臨むべきです。しかし、残念ながら同意医師は支払基金や国保連には決して文句を言わず、同意書をお願いした私たち鍼灸師・マッサージ師や患者に対し不平不満をぶつけてしまうのです。不条理なことです。こんな同意医師の対応も情けないですが、これが現実なのです。

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